大津ジャズ日誌 第1回
みなさん今日は。2か月前に大津市民になったばかりの宗純です。
大津ジャズフェスティバルの実行委員の先輩方から、大津初心者の目線で大津の町並みや自然のことを書くようにという依頼があり、何回かに分けて大津とジャズのことを書いていこうと思います。
今時刻は7月4日の午前0時24分。さっきまで大津港からなぎさ公園にかけて1時間ほど散歩して、今戻ったばかりです。天気は晴れ。窓の外はかすかに風の音が聞こえます。
大津は空が広いところです。町全体が琵琶湖に向かってゆるやかに傾斜しているので、町のどこでも琵琶湖を正面にして立ち、上を見上げれば、大空が広がっています。
京阪浜大津駅の改札を抜けてすぐ視界にはいる琵琶湖の水の深い青と、どこまでも続く空のスカイブルー。
この場所が10月15日(土)、16日(日)にはジャズフェスの会場となります。
ジャズのアルバムや曲名の中で一番多く使われている色といえばもちろんブルーです。
マイルス・デイビスの1959年のアルバム「カインド・オブ・ブルー」。
夕方このアルバムを聴きながら大津港から湖岸をパルコ方面に向かって歩いてみましょう。
1曲目の「ソー・ホワット」を聴きながら、琵琶湖汽船のミシガンの出航風景を眺められたら、何と素敵なことでしょう。
3曲目が始まる頃、湖の中に沖合いまで橋が伸びているのが見えるはずです。
さあ遠慮せず一番先まで歩いてみましょう。
今あなたのまわりには釣りを楽しむ若者たちと、カップルが何組かいることでしょう。
3曲目は「ブルー・イン・グリーン」。スローテンポの幻想的な曲です。
2曲目までは控えめに伴奏に徹していたビル・エバンスのリリカルなイントロ。
螺旋を描いて下に落ち込んでいくような、あまりにも美しすぎるそのイントロに聴き惚れてしまったのか、名手マイルス・デイビスも自分の出るタイミングを忘れてしまったという逸話が残っています。
もしかしたらマイルスもビル・エバンスのピアノをずっと聴いていたかったのかも知れない。そんなことを思わせるほど、この曲でのビル・エバンスの演奏は素晴らしいものです。
この橋の先端からは比叡山がよく見えるはずです。
比叡の山並みの濃い緑色と湖面の青色、日没後に赤みを帯びていく空の青色。
それらを「ブルー・イン・グリーン」を聴きながら、ぜひ味わってみてください。
5曲目の「フラメンコ・スケッチ」が聴こえる頃には、右手におしゃれな4軒のカフェが見えてくることでしょう。
あなたのお好みにあったお店でコーヒーでも飲みながら、比叡山に夕日が沈んでいくのをゆっくりと眺めてください。
このマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」は、それまでのハード・バップとは異なる、モード・ジャズを新たに完成させたといわれていますが、音楽理論はともかく、その違いは耳で聴けばすぐわかります。
開放的で自由な感じ。それでいてどこか不思議な雰囲気。
琵琶湖湖岸を散歩しながら、
ぜひそのブルーな感じを味わってみてください。