大津ジャズ日誌 第4回

 みなさん今日は。大津初心者の宗純です。
 京阪浜大津駅から徒歩5分、時代から取り残された風情のアーケード商店街があります。
 「丸屋町」そして「菱屋町」商店街。ここが10月15日(土)のジャズフェスの舞台です。

 

今回は1968年のビル・エバンスのピアノソロ・アルバム「アローン」を聴きながら、大津の町並みとピアノの響きが引き起こす、思わぬ化学変化を楽しんでみましょう。

ここは昭和30、40年代には、大津にとどまらず近郊の住民のお買い物やレジャーの中心地として大いに賑わい、休日には人にぶつからずには歩けないほどだったそうです。

今あなたの耳には1曲目の「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」が聴こえていることでしょう。
一音、一音、その余韻を慈しむかのように、ビル・エバンスはゆっくりとテーマを弾いています。
その一音、一音が、隅々までビル・エバンスの美意識に貫かれた一つの世界を形成していきます。
後はビル・エバンスの独壇場。アップテンポで次々にフレーズを繰り出してきます。
そのどれもが「ああ、これが聴きたかったんだ」と思わせるフレーズの連続です。しかも抑制がきいていて、甘さに流されていないのが、曲の美しさをよりいっそう際立たせています。

  シャッターが下りたままの店、昔の店構えのまますっかり時間が止まってしまった店。
  懐かしさと同時に、いくばくかの寂寥感。宴のあと、祭りのあとの寂しさを感じます。
  
  目をとじると、当時この場所を歩いていた多くの人の顔が浮かんでくるような気がしませんか?  
  子どもを連れた若い夫婦、休日のデートを楽しんでいるカップル、お小遣いをもらって遊びに来た中学生たち。
  さぞや商店街は人で溢れていたことでしょう。
  
  今、その人たちはみんなどこに行ってしまったのでしょうか?

2曲目の「ア・タイム・フォー・ラブ」。
ゆっくりと美しいテーマが始まってから、次第次第に音の厚みが増し、演奏が熱気を帯びてゆく様をじっくり味わってみてください。この曲でのビル・エバンスはまるで音楽の千手観音。一つのテーマから無限のバリエーションを紡ぎだし、どこまでもどこまでも演奏が続いていきそうです。

4曲目の「オン・ア・クリア・デイ」が流れてきました。

  あなたは今どのあたりを歩いていますか?
  商店と商店のあいだに、所々に小さな路地が奥まで伸びているのが見えますか?
  とても細い路地だと、「いったん中に入ったら、二度と出てこられないんじゃないか」、なんて心配になりますね。
  
  でも大丈夫。ちょっと勇気を出して入ってみましょう。
  どうですか?あなたの目の前には50年前の風景が広がっていることでしょう。
  
  大津は江戸時代から宿場町として栄えた所です。
  いまでもこんな路地裏には昔ながらの長屋があちこちに残っています。

「オン・ア・クリア・デイ」はミュージカル「晴れた日には永遠が見える」のテーマ曲。
超能力をもった女性が主人公ですが、ここ大津では誰でもタイムスリップができるのです。
この曲でビル・エバンスは、これまででいちばん躍動的に弾いていて、聴き手の身体も自然と揺れてきます。

アルバムにはあと3曲収録されています。
ビル・エバンスの名演奏を聴きながら、さらに路地裏めぐりをお楽しみください。